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プログラムノート

バッハ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調 BWV 1015 

Bach: Sonata for Violin and Piano  in A Major BWV 1015 

  Dolce 

     Allegro 

       Andante un poco 

         Presto

ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685〜1750)は1717年32歳の時、北ドイツの宮廷ケーテンのレオポルド侯爵に招かれ、宮廷楽士長のポストを得て8年間勤めます。そこの優秀なオーケストラに触発され、この期間には素晴らしい器楽の作品を書いています。

​ヴァイオリンと鍵盤楽器の6曲のソナタもこの時期のもので、トリオソナタ(2つの旋律楽器と通奏低音で構成)の形式で書かれています。ヴァイオリンとピアノの左右の​3声部が、パズルのように組み合わされています。

 第1楽章ドルチェは、穏やかな優しさ(ドルチェ)中でゆったりと歩いて行く雰囲気です。3つの声部が追いかけながら表れる面白さを

     お聴き下さい。

 第2楽章アレグロは一転して華やかで活発な楽章で、それぞれの楽器に様々な技巧が取り入れられています。

 第3楽章アンダンテは、悲しみをたたえた瞑想的な曲です。ピアノの左手の規則正しく刻むリズムに乗って、ヴァイオリンとピアノの

      右手がカノン(輪唱)を繰り返す面白さがあります。

 第4楽章プレストは、ウキウキするような楽しげなテーマが交互に表れる3つの声部によるフーガで書かれています。

​どの楽章もパズルを解く面白さがあり、聞きながらその謎解きを楽しんで下さい。

 

 

モーツァルト:ソナタ へ長調 KV.377

Mozart : Sonata  in F Major KV.377

  Allegro

    THEMA con Variazioni 

      Tempo di Menuetto

 

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)のヴァイオリンソナタの中では比較的演奏される機会の少ない曲です。

1781年、25歳の時に続けて6曲のソナタを書きすぐに出版されました。1曲1曲多彩な表情を持っていますが、このヘ長調のソナタはまさしくモーツァルトの心の底がにじみ出ている作品と言えます。

 第1楽章 アレグロは、ピアノの力強いテーマで始まりますが、このときヴァイオリンは急速な3連音符を刻み勢いを加えます。

             この3連音符はピアノに引き継がれ、一瞬の休みもなく無窮動のように絶えずどこかのパートで弾かれます。

               息つく間もない緊迫感が特徴です。

 第2楽章 変奏曲は、憂いの深いむしろ悲しみをたたえた主題で始まります。変奏曲が進むにつれ段々に感情が外に表れ、やがてモーツァ

     ルトの慟哭が聞こえてきます。その後に一瞬薄日の差すような長調の変奏曲があり、最後は諦観の漂う寂しげなシチリアーノの

     変奏曲で消え入るように終わります。

 第3楽章 メヌエットのテンポで、長調の曲ながら途切れ勝ちにため息をついている哀愁を帯びた楽章です。快活な中間部の掛け合わ

     の後は、又元に戻り消え入るように終わります。

コルンゴルト:「から騒ぎ」 組曲 (シェークスピアの劇音楽) 作品11

Korngold:Much ad about Nothing Suite Op.11  

 The Maiden in the Bridal Chember  (花嫁の部屋)

     Dogberry and Verges  (夜警のマーチ)

       Scene in the Garden  (庭の情景)

​    Masquerade(仮面舞踏会) 

 

ーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897~1957) はオーストリア出身のアメリカの作曲家です。モーツァルトの再来と言われるほどの神童で、マーラーやリヒャルト・シュトラウスなど多くの音楽家から賞賛され、15歳の頃にはプロの作曲家として活躍し、20代前半にはオペラ作曲家として世界的評価を受けるようになりました。シュトラウスとプッチーニを合わせたような感性と作曲テクニックで人気を博しました。その後ナチスの台頭で故国を離れアメリカへ亡命します。これをきっかけにハリウッドの映画音楽を手がけるようになり、やがてアカデミー賞さえ受賞します。

この組曲はシェークスピアのドタバタ喜劇「から騒ぎ」の付帯音楽としてオーケストラ曲のために書かれ、その後作曲者自身によりヴァイオリンとピアノの組曲としてまとめられました。

 第1曲「花嫁の部屋の乙女」 結婚式を待つ乙女を描いた場面の音楽で、繰り返されるメロディーはみずみずしさに溢れた印象に残る

    曲です。

 第2曲「夜警の行進(ドグベリーとヴァージェス)」は、劇後半に登場する警官の名前で、いつも話すときに反対言葉を言ったりどもっ

    たりするシェークスピア特有の言葉遊びを独特のリズムで表しています。グロテスクな葬送行進曲のテンポで と指定があります。

 第3曲「庭の情景」 夜の暖かな空気をシンプルな旋律で表し、それを支える美しいピアノの和音はコルンゴルトならではのものです。

 第4曲「仮面舞踏会」は、ホーンパイプと言われるイギリスのフォークダンス音楽の形式でかかれ、速いテンポで目まぐるしく踊る

    舞踏会の様子を表しています。

 

フォーレ:ソナタ イ長調 作品13

 Fauré:Sonata in A Major Op.13

      Allegro molto

           Andante

              Allegro vivo

                Allegro quasi presto

フランス近代音楽の祖とも言えるフォーレ(1845~1924)の、最初の室内楽曲がこのソナタです。31歳の時の作品で、その後のドビュッシー、ラヴェルなどのソナタに大きな影響を与え、ヴァイオリンソナタのレパートリーには欠かせない一曲です。当時フォーレが熱烈な恋愛中だったことを考え合わせると、青春の夢と情熱が痛いように伝わってきます。

第1楽章 アレグロ・モルトは、軽快なテンポでヴァイオリンとピアノが絡み合うように流れます。その中には幸福感と不安が交錯している

    のでしょう。

第2楽章 アンダンテのたゆたうリズムからは、夢見心地の中の若々しい情熱が感じられます。

第3楽章 アレグロ・ヴィーヴォの目まぐるしい掛け合わせは、きらめく陽光を思わせます。

第4楽章 アレグロ・クワジ・プレストでは、再び流れるようなメロディーが表れ、懐かしさと優しさを漂よわせて終わります。

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